AI雑感

.....先日、上海から友人が来日していたのであるが、彼は昨年の暮れから一か月ほど渡米していた。彼は技術者で製造業、技術系のお仕事、という事でなおさらそうなのかもしれないが、アメリカにおけるAI利用の普及はすさまじいものがある、と話をしていた。さらに中国における生成AIの進化も驚異的である。

日本も、今更ながらにデジタル庁が創設され、国を挙げてデジタル化に取り組んでいるが.....正直なところ周回遅れではないだろうか。極言すれば、デジタルの世界、あるいはデジタル化できる世界では、人間は生産性においてAIには勝てないからである。

しかし考えてみれば、日本で家庭用パソコンが普及し始めてから40年くらいではないだろうか。1995年にウインドウズ95が発売されて、パソコン通信からインターネットの時代が始まり、いやおうなしに学校や職場でもパソコンを導入するようになっていったと記憶している。
いずれAIの進化と深化により、パソコンに入力し、デジタルの世界で行われる仕事のほとんどの領域から人間が駆逐されるのではないだろうか。
SFで出てくるように、マザー・コンピューターに音声で質問し、音声で答えをもらう、というような世界はすでに現実化している。ほとんどの企業では、業務に沿って適切な回答を用意する.....LLMを構築する......ことが企業経営者の仕事になるのかもしれない。
ちょっと歴史家的な視点でみれば「20世紀末から21世紀初頭にかけて、人類はデジタルデータをキーボードで入力し、学習や仕事をしていた。」というように記述されるのかもしれない。

正直なところ、そういう世界に早くなって欲しい、いやなって欲しかったくらいである。この文章もキーボードで入力しているのであるが、正直、キーボードは嫌いである。できればペンや鉛筆でカリカリ書く方が良いのであるが、生産性を考えるといかんともしがたいので使っているだけである。
効率化の為に人間がデジタル依存し、見方によっては従属していた時代が、AIの進化によって終わるのかもしれないし、そう期待している。AIがデジタルの世界から人間を解放してくれる、といえば楽観的に過ぎるだろうか。

対話型AIや生成AIは、今や驚くような結果を出力してくれるが、専門家の視点で見れば、まだまだ未熟なところが見える事もあるという。ただ、それも人間の予想以上にAIが早く進化することで、解決してしまうだろう。なぜそう思うかといえば、かつて将棋の世界における人工知能の発達がそうだったからである。専門家の大半がまだまだ遠く及ばないと思っていたら、ある日あっという間に人間を越えてしまうのである。そういう事は、デジタル化されたデータを介して行われていた、あるいはデジタル化が可能な、あらゆる分野に及ぶだろう。

そうなってくると、ほとんどの人間の仕事はデジタルから離れてゆき、いずれフィジカルを通じてリアルな世界に働きかける事にしか、価値が見いだされなくなるだろう。振り返れば、コンピューターが発明され、日常に浸透するようになったのも半世紀くらいの間の出来事である。人類史的に見ればこれはAI出現の前段階だったと、みなされるのではないだろうか。やがてAIが社会に浸透して後は、ごく少数の専門家を除けば、コンピューター出現以前のアナログとフィジカルの世界の活動に、人間が戻ってゆくのかもしれない。

いささか我田引水的に考えると、生成AIの進化によってデジタルアート全盛の時代が終焉し、ふたたび書画や水彩、油彩画に価値がある時代に戻るのではないだろうか。というのは、その予兆のようなものが、僅かであるが、始まっている事が感ぜられるからである。これはパソコンの画面を開いて検索をかけているだけではキャチできない、街を歩いているとわかるごくわずかな変化なのであるが.....今のところうまく言語化することが出来ていない。
インターネットの登場がそうであったように、好むと好まざるとにかかわらず、生成AIがもたらすインパクトはアートの世界を激変させるだろう。むろん、デジタルのみならず、アナログの世界も変化せざる得ない。
とはいえ、目下の関心は文房四寶の世界に集約されるのであるが、そこでは今まで見られなかった事が起きている。これは生成AI登場の少し前からの現象であるが、おそらく生成AIがその変化を加速させるだろう。手遅れにならないうちに対策を講じなければならないと、日々考えている次第である。
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お店:http://www.sousokou.jp
BlueSkye:鑑璞斎

ブルースカイアカウントつくりました。

”ブルースカイ”にアカウントつくってみました。

”鑑璞斎”といいます。ご自由にフォローいただければと思います。
https://bsky.app/profile/solidink.bsky.social

日本語でも300文字入力できるので、ある程度の情報は発信できるのではないかと考えました。SNS活動というより、ミニブログにような位置付けになります。
「断箋残墨記」にまとめきれない、まとめきる以前の草稿のようなつぶやきになるかもしれませんが、御静観いただければ幸いです。

宜しくお願い申し上げます。

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今日から辰年

今日は旧正月の新年です。2月の初めともなると「新春」の語にふさわしい気配も感じられなくもありません。日本では明治五年から太陽暦を採用し、新暦の1月1日を正月に定めていますが、長年大陸を往来したせいか、せめて干支だけは旧正月の元旦から始めたいような気分があります。

先日、京都の『清風荘』を見学する機会がありました。清風荘は出町柳から百万遍に向かって柳通を歩いてゆく途中にあります。
清風荘は明治末期に首相を二度務めました、西園寺公望公の京都の別邸として建てられた建物で、京都大学が管理している重要文化財です。
昨年から月に1度ほど、百万遍のある研究会にお誘いいただいてお邪魔しているのですが、そのたびに出町柳からこの清風荘の塀の前をずっと歩いていました。とはいえ今まで、どなたの所有なのかさえしかとは認識していませんでした。京都大学に通う学生さん達も、ほとんどの方は邸内を見ないままに卒業されるとかされないとか。今回、邸内の撮影は許可いただいたものの、一般公開されていないために、残念ながらここに写真を掲載することはできませんが、いろいろと勉強になりました。

佳木佳材をふんだんに使用した茶室、伴待に始まり、邸内七十本もの松を植えた美しい芝と池と築山の庭園、明治期の数寄屋建築の粋を極めた邸内をくまなく案内していただきました。網代編みの壁や明治ガラスの雪見障子、また応接室の天井の羽目板が屋久杉で出来ていたり、現代ではとても建てる事が出来ない贅沢な建物でした。手すりや取っ手に使われている真鍮金具や、瀟洒なペンダントライトなども実にお洒落です。
しかし考えてみれば庭園の石木も、建物の材料もほぼすべて天然に存在する材料です。主屋は瓦葺きですが、これは町家にも使われる桟瓦で、質朴な趣きがあります。茶室の屋根は松皮で葺き、また欄間に煤竹など古材、また枯れて趣ある形象に腐食した桐の古木などを使用しているあたりも「わかる人にはわかる贅沢」。こういった趣味性というのは、贅を尽くすほどに簡素な景観を呈すもので、西洋におけるいわゆる「上流階級」の目指す絢爛豪華とは程遠いものがあります。

木造建築は火災で失われる事がありますが、絶えず木材を必要とする意識が山林を育てます。世界的には、豪華な建物といえば基本的に焼成した磚(せん:レンガ)を重ね、漆喰で壁を塗ります。それはそれで美しい建築様式を生み出すのですが、屋根瓦や磚、タイル等を造るために、大量の薪を必要とします。磚も再利用されるとはいえ、やはり歴史的に古代都市周辺の山林減少の一因となった、という面は否めないものがあります。環境負荷の面からも、日本の木造建築は優れた建築文化、と言えるのではないでしょうか。(ただ、維持管理はそれなりに大変ではありますが)

では辰年の本年、皆様方には飛躍の年となられますよう。

店主 拝
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能登その後

能登に住む親戚は先週くらいに避難所から自宅に戻ることが出来、水道はまだ復旧していないようですが、近所で井戸水を分けてもらっているそうです。オール電化の電気は使えているという事でひとまず安心しているところです。
親戚のうちは母方の実家であり叔母が継いだのですが、子供のころお盆に親の帰省についていってよく遊んだものでした。当時、田舎とはいえガス電気上下水道はもちろん通っていたのですが、風呂は薪で沸かし(近くに製材所があり、端材はいくらでも手に入りました)、井戸水をくみ上げて使っていたようなところでした。

志賀町の方は米農家が炊き出しをしたり、お節料理がほぼ手付かずで残っていたり、たいていの家では納屋や床下には米や味噌、梅干しや”へしこ”などが貯蔵されているので、食べ物はなんとかなったそうです。しかしこれが奥能登の輪島穴水七尾になると倒壊家屋や火災が多く、状況がだいぶ違っているのではないかと思います。最大震度7の志賀町では倒壊が奥能登ほどなかったという事なのですが、これはなぜなのか......
その昔、奥能登や輪島や能登島へも志賀町から車で遊びに連れて行ってくれましたが、小高い山を越える道になります。察するに山道が通れる状況ではなく、奥能登で食糧事情がひっ迫しているのもそのためではないかと考えています。金沢から志賀町、また金沢から奥能登のルートは確保されているようですが、志賀町から奥能登の道路が通行止めか、通っていても片側通行になっているのでしょう。

石川県はかつて『加賀百万石』と呼ばれた米どころでもあり、能登半島も羽咋市あたりまでは水田が多いのですが、奥能登になると「千枚田」に象徴されるように、水田に適した用地が少ないものです。このあたりも、現在の奥能登の苦境に影響しているのではないかと思われます。
能登半島は小さな漁港がいくつもあるので、海路で輸送はできないものか?という事も考えたのですが、地震に伴って多くの漁港で海底が隆起し、水深が浅くなって少し大きい漁船では岸壁まで近づけないようになっています。港の復旧にはだいぶ時間がかかるでしょう。

能登半島も高齢化と過疎化が進行している地域ではありますが、漁業や林業、水産業、「能登牛」に代表される畜産業など、都会に米や新鮮な野菜や魚介類や肉類を供給してくれています。また日本に住む以上、地震の無い地域はほぼ無いと言っていいわけですから、このような時こそ「お互い様」の精神でありたいものではないでしょうか。

店主 拝
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令和六年 謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。
本年も、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

月並みなご挨拶となりましたが、令和六年はしかし大変な幕開けとなりました。能登の志賀町は母方の実家で親戚がいるのですが、皆々避難所で無事という事で、ひとまず個人的には安堵しているところです。最大震度7ということで驚愕したのですが、被害は七尾や輪島、穴水など、もう少し北の方が大きかったようです。これらの地域は、昔はよく遊びに行った場所なので、惨状を目にするとやはり心が痛みます。2020年から震度6前後の強い地震が毎年のように続いていましたが、被害は能登半島先端部に集中していたように思います。
地域的には困難な状況が続くと思いますが、まずは一刻も早い復興を願っております。

おもえば能登半島も、少子高齢化が進む過疎地ではありますが、普段、我々が都市部で豊かに生活できるのも、日本の農業、漁業をこうした地方の、特に高齢の方々が支えている、という現実を忘れてはならないと思います。

地方のインフラ整備に回す予算があれば、都市に集中させ、人も都市に住めばよい、という極論もみかけます。しかしそのような事をやって、色々な問題が起きているのが現在の大陸ではあります。
都会に住む人が消費する生鮮食品のすべてを、輸入で賄う事ができると考えているのでしょうか.....新鮮な野菜や魚介類を享受できるのも、地方のおかげなのです。(輸入野菜と、冷凍や加工された肉類魚介類だけでいいじゃないか。という向きもおられるかもしれませんが。)
たとえば香港のような都市であっても、周辺の広東省で生産された食料を輸入することで成り立っているわけです。都市の近郊が荒廃してしまったとき、都市の生活も成り立たなくなる、という事が考える必要があるでしょう。また都市で災害が起こった場合、救援したり避難したり出来るのも、整備された周辺地域があるから、という事になります。人口の集中が生み出すインフラやライフラインの負荷の問題は、効率化、だけでは解決困難なところもあります。
『無駄を無くせ!』を掛け声に、いろいろなものを切り捨てて来た日本ではありますが、いよいよ地方までも切り捨てる事になるのでしょうか。災害が多い国だからこそ目先ばかりの『選択と集中』よりも、ポートフォリオによってリスクを分散し、必要に応じて冗長性を持たせる、というような考え方が必要なのではないでしょうか。

国をあげて観光誘致に躍起になっている日本の昨今ですが、外国人観光客が日本のどういった所に魅力を感じているか?というと、ひとつには緑豊かな自然に近く、よく整備された地方の生活にある、という事を聞きます。海外にももちろん美しい自然はありますが、アクセスが大変な事がよくあります。こういった事はたとえば大陸の農村などに行くと良くわかるのですが.....大陸の江南古鎮のような美しく、風光明媚な場所もありますが、必ずしもそういった地域ばかりではないのが現実で、荒涼殺伐としたところも多いのです。
日本の農村は、特に田畑が美しく整理されていると思いますが、そういった風景を見て感激する海外の人は今や少なくない、という事です。旅の目的が、観光スポット巡りから、海外での生活の体験に移ってきている、という事もであるという事です。換言すれば京都をはじめとする「名跡の美」ばかりではなく、日本の「生活の美」に関心が向けら始めているということで、そういった日本の豊かな郷村を、「効率化」の名の下に、このまま衰退するに任せていてはいけないのではないか......と思う次第ではあります。

店主 拝
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