Jan.2020 HK

......今回は上海から深圳に移動し、香港から帰国しました。デモの影響が懸念された香港ですが、ところどころに痕跡を残すものの落ち着いていて、いたって平穏な雰囲気ではありました。
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一部ではデモが暴徒化したという見解がみられますが、地元香港の友人の話ではそもそも香港警察が平和なデモ隊へ向け、突然に三方向から逃げられないカタチで催涙弾を発射したのが発端、ということです。彼は6月12日と日付まで覚えていました。暴徒化した群衆鎮圧に催涙弾を使用するのはまだしも、法的に認められた平和的なデモに対し、警察が催涙弾を使用するのは過剰な対応と言えるでしょう。
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またデモ隊一部の地下鉄への破壊活動も報道されていましたが、これも地下鉄が突然停車し、警官が乗り込んできて乗客を無差別に殴りかかった、ということです。それで香港の地下鉄「MTR」は「体制側」とみなされ、破壊の標的になったということです。
警察の中には明らかに大陸から派遣された警官が入り込んでいて、広東語(香港語)を話せない警官も相当数いるということです。香港の警官は相手を制圧するときに左足で頭部を踏みつけるところを、右足を使用している警官もおり、これは大陸の公安のやり方だ、という話もありました。
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そうは言っても一部過激化したデモ隊に対しては香港市民にも賛否があり、現実的ではない要求を掲げて星条旗を振ったりするのは「やりすぎ」という意見もあります。
現実を理解しない若い学生が理想に凝り固まって過激化する、というのはかつての日本でも長期間にわたってみられた現象ですね。破壊活動は日本国内にとどまらず、世界へテロ活動を広げた顛末は日本の現代史から削除してはならない事実であるといえるでしょう。
しかし大陸政府の香港への干渉にはおおむね反発が強く、普通選挙の実施も含めて今後もデモは「平和的に」継続するだろう、という事です。

香港という都市は移民も外国人居住者も多く、多様な宗教や価値観が共存する社会です。いうなれば大昔のシルクロードのオアシスの都市国家のようなものでしょうか。そういう都市に画一的な価値観がフィットするか?というと確かに疑問に思えます。
香港と大陸中国の摩擦や軋轢の原因は、民主主義と全体主義の違いであるというように言われることが多いように思えます。表面的にはそういった面がありますが、より本質的には所有権、私有財産権の有無であると、香港の友人は言います。
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社会主義と、社会主義の理想形である共産主義は、あらゆる資産は事実上国家が所有します。
共産主義とは、かいつまんでいえば、国民全員が共産主義者であり全員が政治参加するゆえにもっとも民主的な国家の状態であるとします。半島北部国家の国名の意味がわかりますね。皆が同じ意見だから決め事はすべて全員賛成、という、これも理想の理論です。
また国民すべてのものであるところの国家がすべての資産を所有するがゆえに、すべての資産は国民すべてのもの、だから自由で平等、という一種の理想論です。社会主義は共産主義を理想としつつもその過程にある社会体制、というほどの意味になります。ゆえに中国には共産党の一党独裁でありながらも、社会主義国、という位置づけになります。
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以上を踏まえると、香港と大陸中国の社会制度の根本的な違いは私有財産権の有無にある、という言い方も可能です。私有財産が法的に保障されている、という事で大陸の富豪や官僚は香港にせっせと資産を移転し、身内に香港籍や外国籍とらせるなどして自分の資産の保全をはかるわけです。これはかつて大陸政府の治外法権であった外国人疎開地に、大陸政府の高官や富豪が資産を移転していたのと同じ動きであるといえます。一朝ことがあれば何が起こるかわからない大陸にあって、高い地位に上り詰めるほどに、また巨大な資産を築けば築くほど、逃げ出す算段は重要になってくる、という事になります。
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ゆえに香港の存在は大陸の社会主義、共産主義における”所有権”の矛盾を補完する地位にある、ともいえるでしょう。香港の特権的な地位が喪われるとすれば、大陸政府が香港と同質の透明度の高い社会システムと、司法の独立、等々の自由主義社会に必要な制度基盤を持つにいたったときになるでしょう。
逆に考えれば、香港の自由主義的な社会システムを否定し、大陸と同質のシステムにしてしまうことは現在の「特色ある社会主義」を危機に陥れる可能性をはらんでいるとも考えられます。

香港の友人の見解では、大陸政府が軍を派遣するなどの実力行使に出ることは、大陸政府が香港に積み上げた資産や権益が灰燼に帰すことを意味するだけに、これまでも出来ないと考えていたし、今後もできないだろう、という事でした。私もこの意見には同意できます。大陸の権力機構の現実において、権力を得るという事は資産を得ることであり、資産を喪うということは権力を喪う事でもあるからです。
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とはいえ香港は大陸と地続きという事もあり、台湾のように独立性を高めることにはある種の限界があると、現時点では思います。良くも悪くも香港には軍事力が皆無であり、独力で安全保障を担保する方法がありません。デモ隊の一部が主張するような香港の完全独立、自立はやや現実離れしているといわざるを得ないでしょう。
個人的には、香港の自由かつ透明で公平な制度はこのまま維持していってもらいたいと考えています。香港のデモが要求する「五大要求」は実現していませんが、今回一連のデモを通じて、大陸政府に香港の特異な地位の重要性と必要性を再認識させた、という事は言えると考えられます。
とはいえ香港の行政府や大陸政府の出方には予断を許さないものがあり、今後も注視してゆくことが必要でしょう。
落款印01


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BlueSkye:鑑璞斎

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