老街の通行票

黄山市は人口およそ140万人の”小さな”街である。その黄山市では最大で9人の感染者が確認されたが、その後6名が退院し、2月22日現在の患者数は3名である。そして一昨日の21日になってようやく、それまでの厳重な外出制限が緩和されたそうである。
現在大陸全土では厳しい外出制限がしかれているが、黄山市は人口140万人に対して”たった10人に満たない”感染者が出ているだけにも関わらず、黄山市屯溪区の老街でも通行票を使わなければ外出することができなくなっていた。配られた通行票の枚数分しか、外出できないのである。市内の各所に”検問所”が設けられ、体温がチェックされ、マスクの着用と手の消毒を実施し、通行票を確認の上で入出できるのである。このような厳戒態勢は黄山市に限らず、大陸全土で行われているのである。

その老街に住んでいる朋友から先月末に「マスクが欲しい」という連絡が来たので何とか送ろうとしていたのであるが、郵便局でいわれたのは、関空は(救援物資の)荷物でごった返しており、個人的な荷物はとても届く見込みがないという。

航空会社各社は中国方面の便数を大幅に削減しているが、旅客機というのは乗客以外にもかなりの航空貨物を輸送するのである。基本的に、乗客がゼロでも貨物を運ぶだけで最低限の運航費用はペイする、というような話も聞いたことがあるが本当だろうか。ともあれ、旅客機が大幅に削減された事で航空貨物の輸送量が大幅に低下し、日本郵政は輸送機をチャーターしたほどである。それもひとつの原因であるが、さらにくわえて中国側の人員が圧倒的に足りない、という事情もあるという。ゆえに中国側に輸送できてもさばききれないのだとか。
しかし試案の日々を送るうちに、黄山市の感染患者数は治癒によって3人にまで減少し、厳重な外出禁止令は一応は解除されたようである。それどころかどうもここ数日、日本での感染拡大が中国で報道されており、朋友は私が買ったものの送れていないマスクを「いらないから日本で使って。」と言う。今度はこちらの心配をされているようである。

先週に入って大陸では新たな感染患者の数がやや減少傾向を見せ、治癒者も増えたため、感染患者の総数は減少傾向にある。厳重な外出制限が奏功し、またおそらくは治療法が確立され始めたためであろう。
一時は患者数が1200人を超えた湖北省随州も、2月21日現在873人にまで減少している。治癒した人数が386人、死者は28人である。患者数が増加傾向にあるうちは先が見えず不安を募らせていた随州の朋友も、今は早く封鎖が解除されて仕事を再開できることを願っているようである。
しかし朋友の話では、患者数が減少しているにも関わらず、外出制限が緩和されるどころか2月16日に完全な外出禁止令が発令されたのである。住民は誰も、一歩も、原則外出を禁止されるのである。むろん車両の通行も制限されたうえで、食糧や医薬品などの必需品はすべて配達されるのである。配達といっても、無料というわけではないのだそうだが、ほとんど配給に近い状況である。
患者数が減少傾向にあるところで外出規制を一層強化し、一気に収束に持ってゆこうという事であろうか。

中国の集合住宅はたいていは”小区”というエリアに区分されているのであるが、この”小区”は行政区分の最小単位でもある。小区ごとに、「何々委員会」というような、要するに中国共産党の末端組織が置かれている。その委員会を通じて厳重な通行管理が敷かれているのである。その委員会の権限というのは、日本の自治会などの比ではない。
いうなれば現在の大陸各地は戦時中の戒厳令下に近いものがあるのだが、このような体制を非常時という事で全国全土に施行することが出来てしまうあたりが、国家の体制が日本とは全く異質な国であることを思い起こさせる。
仮に日本で爆発的な感染拡大を見たとしても、このような厳重な統制は、とてもの事、実施出来ないであろう。ゆえに各自が自衛するに越したことはなく、また各界各組織がそれぞれに自主判断で延期するなり一時閉鎖よりない、という事になる。

日本でも目下感染拡大が懸念されている。武漢市のような医療体制の崩壊につながるような爆発的拡大の危険性も言われるが、それはさすがにどうであろう?武漢市の感染拡大の経緯はほかの地域と比べてもまさに別格である。
12月中に感染が市中に広がった後にも情報が隠蔽されたため、市民は全く無防備のまま、1月の中国における年の瀬の宴会やイベントによる接触によって感染者が増大し続けた。さらに春節の移動がほぼ終わった時点で武漢を封鎖したため、パニックになった市民が病院に殺到し、爆発的に病院内で感染が拡大してしまっている。
感染者が少ない段階で当局が早期に警戒情報を流していれば、大半の市民はその時点で自衛し、ここまで感染が拡大する事はなかっただろう。中国の年の瀬の宴会といえば個室の宴会場が多く、親しいもの同士や家族なら大皿や鍋に直箸である。深夜まで個室のカラオケに繰り出すこともある。家屋は土足で出入りする。オゾン殺菌の空気清浄機を置いている家庭は少ない。また日本のようになんでもかんでも”抗菌”加工された日用品であふれているわけではない。
さらに大陸中国に渡航の経験がないとわかりにくいことであるが、大陸の鉄筋建築には開閉可能な窓が少なく、排気や通風といった換気の環境があまり良くないのである。ビジネスホテルでも、窓のない部屋や、ごく小さな窓がひとつあるだけ、という部屋も珍しくない。通風孔があるにはあるが、適切に排気口に通じているのかどうか。レストランの個室についても同様である。
無防備であれば感染するな、という方が難しい環境であり、ゆえに早期に情報が提供されなかった事実は重大な意味を持つ。新型ウイルスの出現は災難には違いないが、武漢市の現在の状況は多分に人災の側面がある。

日本の衛生習慣や公衆衛生環境を過大評価するわけではないが、情報が行き渡り医療機関や市民が十分警戒している以上、情報がなく無防備のままウイルスにさらされた武漢市のような極端な状況になるとは、現時点では考えにくい。武漢市から感染者がちらばった中国各地も、厳しい外出制限が奏功したためでもあろうが、感染は抑制傾向を見せ、現在は収束に向かっている。
とはいえ、油断していいという事ではない。関係当局の対応は対応として、各自自衛につとめるよりない。船舶や病院、学校、スポーツジム、そして家庭内ということを考えると、やはりポイントは閉鎖された空間で感染している、という点だろう。道ですれ違ったくらいで感染するわけではない。不特定多数が集まる場所に長時間滞在することを避けるとともに、換気に気を配るべきでないだろうか。

一般に気温があがり、湿度が高くなるとウイルスの拡散は抑制されるという。乾燥しているとウイルスが軽くなって飛散しやすくなるが、湿気があると重くなるからだそうだ。暖かくなるにつれて、この新型肺炎が収束することを期待するよりない。例年にまして春が待ち遠しいところである。
落款印01


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