新老坑袖珍硯三面

新老坑袖珍硯を三面、近日店頭にお出ししようと思う。

”袖珍(しゅうちん)”の文物、というものがある。袖の中に入れて楽しむ、小さな文物を言うが、硯では特に小型のものを”袖珍硯”と呼ぶことがある。
このように小さな硯が実用になるのか?とみる向きもあるが、王朝時代の佳墨は10gを切るような小型の墨が珍しくない。小指より細いくらいの墨を少量磨って用を足すのであるから、大きな硯は必要ないのである。

携帯用の文房四寶セットというものがあり、中国の有名観光地でお土産品として売られていたが、かつては日本人観光客によく売れたという。また日本の書道用品店でも見かけることがある。見た目は整って可愛らしいのであるが、実用に耐えうるかというと疑問である。墨も硯も良いものはない。やはり自分で筆も墨もえらび、出先での用をまかなうようにそろえた方が良いだろう。
そこで問題になるのは硯である。小さな硯、特に唐硯はなかなか良い品に出会えない。どこかに有るようでいて、探すと無いのがこの種の硯なのである。携帯しやすい方が良いから、適度に小さく、厚みは薄い方が軽くて良い。しかし硯材の質まで求めると、難しいものがある。

老坑水巌や新老坑など、老坑系の硯石はあまり大きな硯材は採れない。それでは小さな硯がたくさん作られるか?というと、そうでもないのである。一つには大陸中国の現代的な好みとして、小さな硯は好まれない。その昔の文人たちが、小さな文物を自慢しあった文化が無いのである。大きければ大きいほど良い、といった価値観である。たしかに老坑系の硯石に関しては大きな材は希少であるから、希少性をもって貴とし、とすればそのような話になるのであるが。

今回ご紹介する三面は、小さく瀟洒に造られた硯であるが、小さいながらもいずれも氷紋が認められる。そのような石品の見どころがある材だから小さいながらも硯にしてもらえた、という事情も想像されるのである。

氷紋が出た老坑系の硯となると、ある程度の大きさのあるものは、現在とても高価で手が届きにくい。四直の硯板で薄意の彫琢が施され、長辺が20儖幣紊發△襪茲Δ文Г箸いΔ里蓮△發系傾水巌であれば大変に珍しいものである。そもそも長方形の硯というのは、元の硯材の面積は倍ほどあったと考えて良い。それは非常な高値が付いても致し方ない。
しかしこまった事に硯材として質の劣った沙浦からも氷紋の出る硯は採石されるので、老坑の氷紋硯板として多数流通しているような現実がある。

老坑水巌ないし新老坑であるからといって、必ずしも氷紋が出るわけではない。むしろ氷紋の出る新老坑硯は珍しい。また氷紋があるからといって新老坑や老坑水巌とは限らない。文物においても「逆必ずしも真ならず」という真理をつねに念頭において考えないと、単純な言葉のすり替えに騙される事になる。しかし巷間、そのように言って、まがいものを売る者達があとを絶たないのも事実である。

実に物憂い昨今であるが、選び抜かれた精良なる文房四寶が、皆さまのひとときの慰めとなれば幸いである。
落款印01


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