徐渭「応制咏墨詞」

蘇州博物館は2年程前に、リニューアルしている。写真はその周辺の街路の様子である。蘇州博物館周辺この時は8月の暑い最中であったが、休日の人出でにぎわっていた。蘇州博物館周辺新しい白い壁が博物館の外壁を延長して続いているが、蘇州の町の雰囲気には似つかわしいものである。蘇州博物館周辺博物館周辺も整備が進み、大きな古玩城(骨董市場)が出来ている。

蘇州博物館には、徐渭の「応制咏墨詞」がある。
縦3.52m 幅1.02mにもおよぶ巨大な書である。
蘇州博物館を訪れた際に現物を観たが、まさに鬼神の書としか思えぬ迫力であった。残念ながら蘇州博物館内は撮影を禁じられていた(それが普通だが)。あまり良い画像ではないが、日本では掲載されている書籍が少なかったと思うので、一応画像をUPする。
徐渭咏墨词轴(蘇州博物館蔵)(クリックして拡大 縦の長さ800ピクセル)
條幅などの作品を書かれたことのある方であれば、縦3.5mもの紙面にこれだけ気力を横溢させ、かつ構成に破綻なく書き下す力量が、尋常一様のものではない事がお分かりになると思われる。
また剣術に通じていたという徐渭の雷光の如き運筆を想起せずにはおれない。筆線は変転しながらところどころに飛白を生じ、千変万化して極まるところがない。

書かれている詞は以下の通り

侯拜松滋,守兼楮郡,絳人品秩多般。
竜剤犀膠,収来共伴灯烟。
煉修依法,印証随人,才成老氏之玄。
是何年,逃却楊家,帰向儒辺。
紅絲玉版霜毫畔,苦分分寸寸,着意磨研。
呵来滴水,幻成紫霧蛟蟠。
有時化作蒼蝿大,便改妝道士衣冠。
向吾皇山呼万歳,寿永同天。
応制咏墨

試みに書き下せば

侯、松滋(しょうじ)を拝し
守、楮郡(ちょぐん)を兼ぬ
绛(こう)、品秩(ひんちつ)に入り、多般
龍剤犀膠(りゅうざいさいこう),
收め来たり共に伴う灯の烟因(えんいん)
煉修(れんしゅう)すること法に依り
印証(いんしょう)、人に随ふ
才(わづか)に成す老氏の玄
是れ何れの年か,杨家を逃げ却(しりぞ)けて,帰りて儒辺(じゅへん)に向かわん。
紅絲(こうし)、玉版、霜毫(そうごう)の畔
分分寸寸に苦しむ
意を研を磨(ま)するに着け、
呵来(からい)して水を滴(したたら)せば、
紫の霧、蛟蟠(こうばん)を幻成し
時に化して青蠅の大と作(な)る有り、
便ち妆(よそおい)を道士の衣冠に改め、
吾が皇に向かい、
万歳を山呼す,
寿、永(とこし)えに天と同(おな)じうすと。

この詩は一読して理解するには、様々な文房四寶の知識と、当時の社会情勢、徐渭の政治的立場を知っている必要がある。文房四寶を歌った唐代以降の詩文を一通り読んでいないと、何を言っているのかすら分からないと思う。
この詩には、徐渭こと徐文長の当時の政治的姿勢がよく現れているのである。この「応制咏墨詞」が作られた時期は、あるいは胡宗憲の幕僚であった時期に近いと考えている。ただ、胡宗憲の失脚の先なのか後なのかはまだ思案中である。
次回は訳出をこころみながらその理由を述べようと思う。
興味を持たれた方がおられれば、一度考えてみるのも面白いかもしれない。

(つづく)
落款印01


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