田黄小景

印材は文房四寶の範囲には入らないのであるが、探さないといけないこともあって、上海では何店舗か印材専門店を見て回ることがある。
「田黄」といえば、印材の王ということで、いやしくも印材を専門にうたっている店なら、幾つかはもっていないと格好がつかないそうな。田黄をショーケースに堂々と展示しているところなんてもう見かけない。金庫にしまっているのが普通だが、頼めばみせてくれない事も無い。買う気なんてさらさら無いのに見せもらった挙句、値段まで聞くというのは随分ずうずうしい話ではあるのだが、これも市場調査の一環である。もちろん、気安く見せてくれる顔馴染みの店に限られるのだが。
田黄小景中にはもったいぶった店もあるのだが、印材好きな店主のいる店というのは、買う気が無くても色々とみせてくれるものだ。そもそもショーケースで展示されている印材も、大きさがあって見栄えがある印材は巴林石や昌化石が多く、寿山石はずいぶんと少なくなった印象である。
一昔前は「なんだパーリンか」といって日本では馬鹿にされていた巴林石も、近頃は大きさのある美材が少なくなり、価格もすっかり高くなってしまった。ほか、広東緑石や西安緑石、東北凍など、二線級とみなされていた印材の高騰が著しい。
田黄小景田黄も硯石と同じで、材が採れなくなってきたころから大きさを惜しんで天然形のまま彫刻が施されるようになる。田黄も重さである程度評価されるから、重量を減らすような意匠も施されない。角柱にカットするなんてもっての他、というわけだ。
まあ、こんな小さな田黄を見せたところで見向きもしない人もいるかもしれないが、これらでもまだ印材に出来るだけ、一応の形にはなっているものである。最近では、穴を通してペンダントやブローチ、ブレスレットなどのアクセサリに加工されたものを見せられたりする。黄い石は幸運を呼ぶ石ということで、身につけることが喜ばれるそうだ。
中国では(おそらく日本でも)硯や墨を好んで集める女性は滅多にいないが、印材は好き、という女性はかなり多い。店主が女性という印材店もまま目にするのである。まあ、準貴石ということで、宝石を愛玩する感覚に近いものがあるのかもしれない。そういうわけで、カケラのように小さく印材にできないような田黄でも、それなりの需要と市場が存在するということだ。
ともかく、硯石にしても印材にしても、限りある天然資源は価格の高騰が著しい。
眺めてため息をつくのがせいぜいであるが、そんな日本人相手でも、ゆっくりお茶を出して印材の説明をしてくれるお店では、ついつい長居してしまうものである。
落款印01


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