高級油烟墨詐欺

数年前、上海で仕事をしているある日本人の方とお酒を飲む機会があった。小生より10歳ほど年長のその人は、今は中国で広告代理店を経営していると語っておられたものである。関心を惹かれたのは、その方が現在経営されている会社の話ではなく、それ以前にやっていた仕事の内容である。嘘か誠か、曰く「詐欺師のアシスタントをしていた。」のだという。
詐欺の手口というのは大体決まっている。ブランド物の紳士服を着て良い靴を履き、高価な時計をつける。そして北京の高級クラブに出入りし、カモと見込んだ人物の前で、派手にお金を使って見せるのだそうだ。そして同じクラブに出入りしている、日本人の駐在員......大手メーカーや大手商社など.....と知り合って仲良くなる。
大手企業の駐在員ともなれば手当も多くて懐は結構豊かなはずなのであるが、それでも目の前で高級ワインやウイスキー、シャンパンをどんどん空けるような派手な飲み方をされると「きっとこの人は凄い人」と思ってしまうのだそうだ。舞台装置として、高級寿司屋まで開いていたらしい。寿司ネタは築地からスーツケースにつめて、飛行機でハンドキャリーしていたそうだ。スーツ・ケースからドライアイスの気体がもれて困ったとか.......今考えると生モノもって、よく飛行機乗って入国できたなあ、と思う話である。今では絶対無理だろう。911テロ以前の航空会社も空港も牧歌的だったのだという。
そして相手が自分に傾倒するようになった頃合いで、「投資しないか?あなたを儲けさせてあげよう。確実だよ。」とささやきかけるのだそうだ。そうすると案外コロッと騙されて、貯えをはたいたり、借金までして架空の投資話につぎ込むのだそうだ........最後にその詐欺師がどうなったかというと、風のうわさでは香港で撃たれて死んでしまったのだという...........まあ聞いた話だし、話1/3としてください。
日本と海外を往復して商売していると、とかく怪しげな話が巡ってくることがある。小生の場合で言えば、それは現地の人からではなく、大陸で仕事をするか、行き来をしている日本人から来ることが多い。数年前に話題になった、冷凍エビの養殖詐欺や、米大統領選のマネーロンダリング詐欺、インドマグロ詐欺なんていう話は、これがニュースになるずいぶんと前から流れている話であった。
”米大統領選のマネーロンダリング詐欺”は、大統領選の選挙資金を作るために”マネーロンダリング”に加担しないか?という話である。こんなのはたとえ本当の話であっても犯罪なのであるが、山っ気のある人物は案外ひっかかるそうだ。選挙運動者、支援者がもつ、海外の秘密口座の資金を送金するため、海外口座を貸してくれ、と持ちかけられるのである。送金額の何%かを謝礼にくれるというのだが、アメリカ大統領選の選挙資金だけに100億とか200億という額で、数%でも数億は転がり込む、ということである。しかしよく考えればおかしいことに気付くのであるが、そもそもそんな巨額の外貨をお咎めもなにもなしに海外に送金できるのかどうか。そして資金がそのカモになった人物の口座に振り込むにあたって、手数料を先払いしなければならない、と言われるのである。そして詐欺師が指定する口座にすくなからぬ額の手数料を振り込むように指示され、それが複数回続く。いつまでたっても、送金のための資金は自分の口座に振り込まれない。やがて連絡が絶たれるのである。まあ、マネーロンダリングの目的はアメリカ大統領選であったり、さる王室のスキャンダル揉み消し費用だったり、不妊治療費だったり、バリエーションはいろいろあるそうだ。この手の話には、何故か王室とか皇族とか、大統領とか王様が出てくる。騙り手も、王室とか皇族の端に連なる人物を名乗るのだそうだ。
ひところ話題になった冷凍エビの養殖詐欺は、エビの養殖に投資しないか?というわりと素朴な詐欺である。これは東アジアで商売をしている人達の間では、かなり古典的な詐欺だそうだ。ちゃんと投資して真面目に養殖したら、意外とうまく行くかもしれないが、実際に事業はしないから詐欺なのである。まあ考えてみれば、話だけの段階なら、”まっとうなビジネス”と”良く練られた詐欺”は、なかなか見分けがつかないかもしれない。

小生も詐欺をひとつ考えてみた。名づけて”高級油烟墨詐欺”である。投資用の墨を売るのである。そして「墨は寝かせれば寝かせるほど良くなって価値が出ます。」「腐ることはありません。」「中国では書画市場が拡大して、高級墨の需要がきっと高まります」「今からたくさん買っておけば、将来きっと価値が出ますよ。」ってな具合で投資を募る。ひとつひとつの歌い文句はまんざら嘘でもない。嘘でもないが、絶対の保障などどこにもない。ある日突然、墨の市場が消えてなくなる、なんてことがないとも限らない。まあ、さらに悪どくするなら、一番粗悪な材料で墨を作っておいて「10年経つまで決して磨ってはいけません。磨ったら価値が半減します。」と言い添えておく。割れにくいように油松煙墨にし、それでも見てくれは良いように金泊で巻いておく.........イタリアではパルメジャーノ・チーズが融資の担保になるという。すりおろしてパスタやサラダにかけるあれである。年数を経れば成熟が進んで美味しくなるし、イタリアでパスタにかけるチーズの需要が消えることはない、というところか。それであれば墨も年数を経れば熟成して色がよくなる、という理屈もあるとおもうのだが。しかし今後需要が先細らないという保障はどこにもない......やはり無理か。
落款印01


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