大陸の資産インフレの行方は....

別段、大陸の不動産の購入を検討しているわけではない。おもえば人の一生そのものがこの世の仮宿りのようなものであり、住んでいるところが借家か持ち家かなどということは、そもそも気にすることではない........というような態度は、かの国ではあまり賛同してもらえない。

それはさておき、不動産市場を少し気を付けて観察している理由は、控えめに言ってもこれが中国経済の”生命線”だからである。いや政経一体のかの国にとっては、経済どころか”政治”においても同様であろう。

新房、二手房


中国の検索サイト「百度」(http://www.baidu.cn)で「○○房价」と、○○に上海や北京など、都市名を入力して検索すると、大陸各地の主要都市の不動産価格(すなわち房价)の推移グラフが現れる。青い線は「新房」すなわち新築物件、黄色い線は”二手房”、つまりある人から売りに出された物件である。
”二手房”に”中古物件”という訳が充てられている例を目にするが、日本のマンションなどにおける”中古物件”と、現代中国の不動産市場における”二手房”は、やや違ったニュアンスがある。「二手」というのは誰かの手から手へ、というのが文字通りの意味であるが、かならずしも誰かが何年か住んでいた物件、ということではない。正確には新築物件が購入され、購入者が不動産登記を済ませた後、再び不動産市場に売りに出された物件、という意味である。
たとえば北京と上海を比較するだけでも面白いのであるが、北京は”二手房”が”新房”よりも2割以上高い。反対に上海は”二手房”が”新房”よりも1割以上安い。直感的に、新しい部屋よりも「古い」部屋が高いというのは理解しにくいのであるが、天津、杭州や南京、広州、武漢、成都などのほとんどの主要都市は同様に”二手房”の方が平米あたりの単価が高い。しかし上海や深 祁、南昌、蘇州、無錫といった都市は”新房”の方が高いのである。
この理由は、”二手房”というのは、すでに住居として完成しており、対して”新房”というのはまだ完成していない「完成予定」の部屋も含むのだという。内装も何もされていない部屋に比べて、内装などにコストをかけているために、高くなるのだという。また”二手房”は、周辺の商店や学校など、生活のインフラが整っている場合が多く、すぐに入居して生活を始められるだけに、需要が高いとも言う。他、税制や不動産登記の費用など、いくつかの理由があるそうな。
全国平均のデータは無いが、新房も二手房も、軒並み今年の5月から下落基調である。また昨今騒がれているような値下がりは今に始まった事ではなく、2011年の7月〜9月あたりから2012年末にかけて、横這い、ないし緩やかに下落している都市がほとんどであることもわかる。それが2013年の1月ごろから再度上昇に転じ、とくに昨年9月ごろからの上昇が目覚ましい。しかし早いところで今年の1月、遅いところでは4月にピークを打ち、そこから横ばい、あるいは微減を開始している。

断供棄房と炒房団


”弃(棄)房断供”あるいは”断供弃房”という語がある。”弃房(棄房)”は部屋を捨てるの意、”断供”は契約したローンの月々の返済が滞る事。要は住宅のローンを払いきれなくなってしまい、銀行からローン契約の違約を追求されて、部屋を手放さざる得なくなる状況の事である。現在大陸ではこれが急増している。こうした状況に陥った人の多くは、住むための部屋ではなく、”投資”ないし”投機”を目的として部屋を購入した人だという。このような不動産投資をこととする人を”炒房客”という。
”炒める”というのは要するに”煽(あお)る”ことであり、投資というより投機に熱心、というニュアンスがある。”炒飯(chao fan)”ならぬ”炒房(chao fang)”というわけである。”炒房団”といえば、”不動産投資グループ”という意味になるが、集団で価格を吊り上げる連中、というような意味でも使われる。”炒房客”は、お金持ちに限った話ではなく、銀行で長大なローンを組んで値上りをじっとまっている庶民もすくなからずいる。

ちなみに”炒股”といえば株への投資であるが、”炒股団”というと、どことなく”インサイダー”の匂いがしなくもない。またかつては”炒画団”(絵画投機グループ)や”炒瓷団”(陶磁器投機グループ)なんていう輩も、暗躍していた時期がある。鑑定家、批評家と結託して、贋物を本物と認めさせてオークションで高値で売ったり、オークションの落札品を高値で転売することを謀っていたのである。リーマンショックを境に減って、2011年ごろにはあまり聞かれなくなったが、絞り糟のような連中はまだそこかしこにいるものである。(あるいは”炒硯団”なんていうのも、はて?いるのかしらん。)

”炒房客”の発祥地といえば、浙江省の温州と言われており、また浙江省全体も”炒房客”が多いと言われている。浙江省の地方都市の庶民でも、やっとの思いでローンを組み、杭州や上海の手が届く部屋を2つ3つと購入して値上りを待っている、”炒房客”も多いのである。そうした”炒房客”はもともとそれほどの収入源を持っていないし、銀行以外にも頭金を親戚他から借金して払い込んでいる。だから何かの拍子に本業が傾くと、たちまち返済が滞ってしまい”断供棄房”ということになる。

温州房价


前述した百度検索で、「温州房价」と検索すると、この都市だけ特異な不動産価格の動きがみられることが分かる。2011年の11月に21,083元/平米のピークを付けた後、ほぼ3年間下がりっぱなしなのである。2014年7月の「新房」の価格はグラフから読めば13,679元、ピークからは30%にも及ぶ下落である。しかも今尚「底を打った」気配はない。とくに「温州炒房団」とよばれるほどの”炒房団”のメッカだけに、いち早く過熱した不動産市場が冷え、下落に向かった格好だ。
この温州では当然というべきか現在”断供棄房”が急増している。温州の”銀監分局”の統計によると、昨年の8月以来、温州で受理された”断供棄房”案件は1107件にのぼり、”棄房”に伴う不良債権額は64.04億元(およそ1000億円)に達するという。2013年の温州のGDPが4,000億元という事を考慮すると、GDP比で1.5%くらいだが、この程度では終わらないだろう。他、広東省の番禺などでも前年比で70%もこの種の訴訟が急増しているという。
温州や番禺の動向は、今後の大陸各都市の不動産市場の「未来形」を占う意味でも、注意した方が良いだろう。

ところで、当然ローンを払えなくなれば物件は押収されてしまうのであるが、アメリカの”サブプライム・ローン”と違い、部屋を手放してもローンの返済義務は残る。とはいえ、払えるはずもないので、残った借金は貸した側にとってはほぼ間違いなく”不良債権”になる。押収した物件は当然ながら競売にかけられるのであるが、期待通りの価格で落札される事も、もはや望めない情勢である。
温州の炒房団は、温州の不動産の高騰が頭打ちになると、売り抜けて杭州や上海など、さらに大都市の不動産の投資に向かった。この傾向は多かれ少なかれ大陸の地方都市に共通で、地方の中小都市の不動産が下げる中、上海や北京がしばし堅調だったのは、地方の物件を売り抜けた”炒房客”がより大都市の物件の投資に向かったからであると言われている。もっとも、上海や北京の市場が頭打ちの昨今、大都市の物件も売り抜けて、今度はロンドンやバンクーバー、シドニー、カルフォルニアといった海外の物件に向かっている。その後は........火星の物件にでも向かうかもしれない。

取消限购


”限购(限購)”という語があるが、不動産投資が過熱して価格が暴騰、庶民から不満が出たのに応じて、中央政府の指導により、地方政府が住宅用不動産の購入制限を実施したことを指す。この”政令”によって、一世帯が購入できる住宅用不動産が制限された。
これは各地方政府ごとに施行される”政令”で、2010年の4月に北京が実施したのを皮切りに、ほとんどの大都市がこれに追随した。北京は購入可能物件を”ひとつ”、深圳などは”ふたつ”など、制限の内容は都市によって違いがあるが、要は”炒房”の抑制である。
その”限购”も、今年の五月くらいから顕著になった不動産市場の低迷を背景に、”取消”する地方政府が相次いでいる。”取消限购”である。北京、上海、深圳など、不動産高騰の著しかった大都市を除く、地方政府ではこの傾向が顕著である。この際だから、投機でも投資でもいいから、”炒房団”に不動産を買ってほしい、という悲鳴にも似た政策の転換である。今のところ、上海や深圳は「限购」を堅守しているが、他は軒並み「取消」の情勢である。8月現在、主要70都市の中で、「取消限购」を施行したのは30都市に上る。
しかし不動産が下落を続ける状況下で、”炒房”が目的の連中が、”待ってました”とばかりに不動産投資に走るのかどうか。ここしばらく様子を見る必要があるが、”取消限购”した地方都市で不動産価格が力強い上昇に転じた、という話はいまのところ聞かない。住むわけでもない部屋は、値段が上がるから買うのであり、余力のある世帯でも、不要不急のものであればなおさら”様子見”するのが普通の判断だろう。

大陸の不動産市場は、もはや尋常な”需給関係”で指し測れるような市場ではない。不動産市場の低迷の原因を過剰在庫や購入制限に求めるのは、一面的に過ぎる見方であろう。

外匯占款


日本ではあまり注目されていないが、6月に入って中国の”外匯占款”が減少に転じたことが、大陸の経済ニュースではちょっとした話題になっている。
外匯占款は英語ではFunds outstanding for foreign exchangeという。日本語の訳では、これは金融機関のもつ「外国為替資金残高」になる。すなわち流入した外貨の"exchange"つまり両替に応じるための、各銀行の人民元の残高のことである。
中国は最近ようやく人民元で貿易代金を決済できるようになったそうだが、大半の中国の輸出企業は依然として米ドルで海外の取引先から輸出代金を受け取っている。あるいは広東の工場などは、米ドルあるいは香港ドルで受け取るところも少なくない。いずれにせよ”外貨”であるから、中国国内の決済には使えない。外貨では従業員の賃金や、資材調達の決済が出来ないから、これを人民元に交換する必要がある。人民元と外貨との交換には制限があるが、”輸出証明”という「この米ドルは、品物を輸出して受け取った代金ですよ。」という”証拠”を添えて申請すると、制限枠を超えて人民元に交換することができる。
なので中央銀行は、輸出や海外からの直接投資によって人民元の需要が増える都度、人民元を”増刷”し、外貨の”両替”の需要に応じる必要がある。”増刷”された人民元は、中央銀行から外貨を保有する商業銀行へ供給される。この外貨両替の需要に対応した”人民元”の総額が、外匯占款なのである。
外匯占款は、外貨が流入すれば増え、流出すれば減る。流出と流入を差し引いた残高が外匯占款である。流出と流入は常に双方向に流れているが、流入が流出を上回れば外匯占款は増え、逆の場合は減るのである。つまり外貨が流入超過することで外匯占款が増え、そのぶんの人民元が商業銀行に供給され、さらには中国国内に流通する人民元の総額の伸びにつながるのである。逆に外匯占款が減少すれば、流通する人民元の総額の減少につながる。市場に流通する資金量を”M2”というが、外匯占款の増加は”乗数効果”とあわせて、M2の伸びにダイレクトに作用する性格を持っている。

外匯占款の伸び悩み


外匯占款は毎月発表されるが、7月23日に公開されたデータでは、6月の外匯占款は294,513.41億元、その前の月の5月と比較すると-883億元の減少になったということである。減少と言っても微々たるものであるが、先月の5月末まで10か月連続で”増加”していたのが、ここにきて”減少”に転じている事は注目にあたいする。もっとも、減少の兆候は先月からあり、5月の外匯占款の”伸び”は前月からわずかに3.61億元であった。これは4月の外匯占款の”伸び”の1%を下回る非常に微小な”伸び”であった。また今年1月から5月まで外匯占款は増加を続けていたものの、その伸び率は漸減していた。ゆえに6月期の外匯占款の”マイナス”はある程度予想されていたことである。
7月の外匯占款の伸びは、378.35億元で、6月のマイナスを回復するほどではないが、若干のプラスに転じている。しかし2013年の10月の4,416億元、今年の1月の4,373億元に比較すると、1割に満たない規模であり、外匯占款のM2増大への貢献は既に限定的であるといえるだろう。
外匯占款の推移

6月に急減した外匯占款が7月に入ってある程度回復したのは何故か?と考えていた。外匯占款はおもに輸出代金の受け取りとと対中直接投資によって伸びてゆく。
7月の輸出は前月比で14%の伸びを見せている。しかし商務省が公開している「中国实际外商直接投资」をみると、7月は4割減となった日本を筆頭に、アメリカもユーロも、ASEAN諸国も、対中投資はのきなみ2割近い減少をみせている。かわって、イギリスが前月比70%を超える伸びを見せ、また韓国も伸びて、投資額では日本を上回る額に達している。
日米欧の直接投資の減少はイギリスと韓国が埋め、なおかつ輸出が急増したために、なんとか2か月連続での外匯占款の減少は防がれた格好である。しかしそれでも、6月の減少を回復するには至っていない。8月のデータは9月に公表されるが、さてどうなるであろうか?
それにしても、ここにきてイギリスからのタイムリーな対中直接投資の伸びは、何か政治的な背景が察せられるところである。

外匯占款→M2→不動産


この外匯占款がM2の伸びに大きく影響する事については先に述べた。外匯占款の増大に比例して、世間に流通する資金量が増えるのである。そしてM2の増大が......不動産を筆頭とする大陸の”資産インフレ”を支えてきたことが、それぞれの推移を比較すると如実に明らかなのである。
2008年以降の不動産価格の推移は都市ごとに異なっているが、俗に「北上広深」と言われる、不動産価格が高くかつ上昇の著しい四都市、北京、上海、広州、深圳の価格推移は良く似通っている。またこれら大都市の不動産価格の推移と中国のM2の推移は、グラフをみる限りではほぼ一致する。すなわちM2が大きく増える時期は不動産価格も上昇し、M2が横這いないし微増減する時期には、不動産価格も横ばいないし微増減にとどまっている。日本の”異次元緩和”が狙ったように、市場に流通する資金量が増えれば資産インフレが起こるという、そのメカニズムはことさら説明するまでもないだろう。
とくに昨年の9月から1月まで、外匯占款は大きな伸びを見せ、つられてM2も増大し、上海を筆頭に不動産価格が押し上げられている。上海は実に前年比30%もの伸びである........異常というよりない。さらに言えば、M2の拡大に支えられている大陸不動産市場は、需給関係といったような、市場原理による価格の決定メカニズムとはすでに大きく乖離してしまっている、と見ることも出来る。

外匯占款と人民元キャリートレード


今年の2月に人民元が急落している。中国の金融当局の誘導によるという見方が主流であるが、元安誘導の目的は何であろうか?元安誘導によって輸出を伸ばす、という事も理由の一つかもしれないが、より直接的には昨年の9月以来の海外からの投機資金の流入の流れを、一度断ち切りたかったと考えられる。
昨年の9月から、米中間の金利差を利用した、ドルと人民元のいわゆる”キャリートレード”が規模を拡大していた。つまり金利の安いドルを借り、金利の高い人民元(建ての資産)に投資するだけで、金利差によって楽に利益をあげる事が出来たのである。何故、昨年の9月から急増したかといえば、おそらく9月にFRBが量的緩和の縮小開始を今年の2月と宣言した事が関係してるかもしれない。すくなくとも2月までは、緩和縮小はしないという確約が取れた事で、米国内にありあまったドルが人民元建て資産の投資に向かったと考えられる。
この”キャリートレード”の急増のおかげで、年初来停滞気味だった大陸の不動産市場は昨年9月から再び過熱し、上海では30%もの上昇をみせている。上海が特に伸びたのは”自貿区”の設置による、経済発展に期待が寄せられたという事もあるかもしれないが、それでもその”原資”の多くは、海外からの”ホット・マネー”の流入であったことがうかがえる。6月の水面下での金融危機を受け、下半期では緩和に傾いた人民銀行ではあったが、それにしても不動産バブルのこれ以上の昂進は望んでいなかったはずである。

大陸の金融当局の思惑を察するに、”M2→資産インフレ”の流れに関しては、これ以上の急激な伸びは困るが、急減も困る、というところであろう。外匯占款のM2に寄与する割合が”横這い”であれば、M2の増減は金融当局......人民銀行のさじ加減でコントロールしやすくなる。
しかし海外との資金の流出入に関しては、必ずしも当局の思惑通りにはいかないものである。5月、6月の外匯占款の急減を見て、ふたたび人民元を上昇基調に戻したのは、海外からの対中直接投資が急激に減る事を防ぐ狙いもあったのだろう。
しかし当局の思惑通り、M2が横ばいに推移すれば、不動産市場価格も横ばい.......と考えたいところだが、価格が上がらなければ、”炒房客”は不動産を買わない。また”投機”目的ではなく、庶民が”マイホーム”としてやっとの思いで買うにしても、高い金利のローンは、不動産価格があがると思えばこそ組めるのである。不動産デベロッパーも地方政府も、多額の借金をして不動産開発を行っている。借金には利息が付くから、仮に価格が横這いであっても、いつまでも持ち続けられるわけではない。現金化するために値段を下げてでも売らざる得なくなる。

QE3の終了、アメリカの利上げと大陸不動産バブルの終焉


アメリカの量的緩和QE3が終了し、10年ぶりにアメリカが金利を上げる時、世界中のドルのアメリカへの回流の流れは決定的になるだろう。すでにそれを織り込んだ流れになっているともみられるし、今年の初めからアルゼンチンなどの新興国で起きている金融不安は、世界中にばらまかれたドルが引き揚げられているからでもある。
思い起こせば”量的緩和”は世界の中央銀行に先駆けて、日銀が初めてやった手法である。2006年3月まで続いた日銀の量的緩和による円の膨張は、円安と日本の”超低金利”を生み出した。低い金利で円を借り、ドルに交換して、アメリカの不動産市場に投資する........いわゆる円の”キャリートレード”が、アメリカの”サブ・プライム・ローン”の膨張させたという事実は記憶に新しい。2006年に日銀の量的緩和が終了した後も、2007年の半ばまで円安は継続し、大量の円がドルに交換されてアメリカに流れ込んだ。が、その”巻き戻し”が起きたとき、”サブ・プライム・ローン”は破綻し、2008年の”リーマンショック”を迎えているのである。

2006年〜2008年と同様に、アメリカと中国、すなわち”ドル”と”人民元”の金利差を利用した”人民元キャリートレード”も、QE3の終結と利上げによって終焉を迎え、”巻き戻し”が起こることは確実である。
中国の不動産融資は”サブ・プライム・ローン”と違って、不動産を放棄しても返済義務は残るから、銀行が破綻する事は無い、という楽観論もある。あるいは多めの頭金を払い込んでいるから大丈夫、という意味不明の楽観論も散見される。が、これはさすがに楽観的に過ぎるだろう。先の”断供棄房”が増え、不動産市場が底割れすれば、最終的に債権の回収はほとんど出来なくなる。むろん、現金一括購入で”炒房”していた連中も多かったのであるが、大半は売り抜けてしまっている。
それよりなにより、地方政府の”土地財政”が回らなくなる。杭州や福州、天津といった、大規模開発に失敗し、財政が火の車の地方政府が辛うじて”回って”いるのは、大手不動産デベロッパーに、相場の半値で土地使用権を叩き売っているからである。大手不動産デベロッパーは、理財商品でその資金をかき集めているが、物件が供給過剰の現在、そのシステムをいつまで継続できるかは不透明だ。

不動産バブルの崩壊を不動産関連産業のみに限って算出する向きもあるが、それは消極的な見方で、これに公共事業のほとんどが付随するだろう。また財政難となれば、国営企業や公務員の給与も圧力を受ける為、個人消費にももちろん影響してくるだろう。言われるように、金融危機や債務危機が起こらない、あるいは表面化しないのであれば、代わりに別の形で人民の生活に影響が出るような現象が起こるだけである。

今後の展開は....?


資金がドルに変わって流出する分、人民銀行は人民元を”印刷”して商業銀行に供給を続けるかもしれない。商業銀行は中央政府の指示で、不良債権化覚悟で、不動産市場を支える資金を供給し続けるかもしれない。結果的に起こるのは、国有企業、地方政府、銀行の、すべての部門のバランス・シートの劣化である。最後は家計に及ぶだろう........
そもそもいくら人民元を増刷しても、アメリカの金利が高い局面になれば、かなりの部分は結局ドルに変わって海外へ流出してしまうだろう。資金補充の意図が補充にならない。日本の”異次元緩和”のよる円の増発が、結局金利の高いドルやユーロに変わって日本から流出してしまい、日本の資産インフレにはほとんど効果が無かったのと同様である。
それでも”リーマンショック”のような、株価の大暴落や為替相場の激変は、中国の場合は起こらないかもしれない。大陸の株式市場は2007年をピークにすでに暴落し、低迷を続けている。為替相場は変動幅を拡大したとはいえ、当局が基準値をコントロールすることができるからである。

しかし為替相場や金利に限らず、ことあるごとに”中国政府は経済をコントロールできている”ことが強調されているが、仮に”コントロール”出来ていたとしても、”コントロール”することによって、市場の歪みがますます蓄積され、”リスク”が解消しないまま拡大している.......これをいくら続けても、経済が”健康体”に戻る事はもう無いだろう。
経済に政治があまりに深く、広く介入してしまっているかの国では、金融や経済の問題を純粋に経済問題として処理できない。経済問題は政治問題に直結し、政治の問題は要は利権の奪い合いなのである。いろいろな楽観論も聞かれるが、ここ数年の動きを見る限りでは、打ち出した改革のほとんどが奏効しないか、あるいは別の副作用を生んでいる。
例を挙げれば低所得者向け住宅、「保障性住宅」の大量供給がある。住宅が過剰に在庫を抱えている現状で、この政策がもつ意味は何であろうか?市場原理に沿って住宅価格が下がり、低所得者の手の届く価格になるのが本道であろうが、市場原理を歪め、高すぎる不動産を下げないことを前提に、低所得者向けの住宅を大量供給しようとしている.......矛盾に満ちた政策である。そもそも絶望的に開いてしまった所得格差の是正を進めるのが、本来の”御政道”ではないかと思うのだが。ともあれ、政策的に作られた膨大な「保障性住宅」の存在は、不動産市場の”歪み”を拡大するだけの結果に終わるだろう。

大陸経済は、もはや自力更生は無理な段階に入っているのかもしれない........それでも、もしアメリカの景気に影が差し、利上げの延期やまたぞろ量的緩和だQE4だ、という事になれば、再び投機資金が流れ込み、あるいは大陸の経済は持ち直すかもしれない。しかしその成長は従前と同じ、不動産を中心とした”資産インフレ”が吸収してしまうことになるだろう...........
ともあれ、外匯占款とM2の関係に現れるように、世界第2位の規模の経済体になって尚、その経済の根幹が外資の流出入に短期的にも大きく影響されるというのは、注意して良いだろう。

...........大陸の資産インフレがいつまで続くか?というのは、ここ数年来の関心事であったのだが、それは硯石とか宣紙の価格とか、そういったものの価格が今後どうなってゆくのか?という事を考えていたからである。ここ10年の大陸の文房四寶の全般的な傾向をみると、価格は上がるは質は下がるわで、良い事はあまりなかった。値段が上がる中で「より良い物を」と求めてきたが、それもだんだん限界に近付いてきたところで、ようやく終わりの見えなかった大陸の”資産バブル”にも先が見えてきた。不動産が暴落したところで、硯や筆が劇的に安価になるとは限らないが、もう少し落ち着いてくるのではないかと期待している..........もっとも、当の中国は”それどころではない”と血相を変えているところであるだろうけれど。
落款印01


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